第1話
命を張った弥七の度胸(松江)1月24日(月)放送
出雲大社で近衛関白の代参を済ませた水戸老公(里見浩太朗)一行は松江城下へと向かう。途中、水をもらいに寄った家で、百姓の窮状を見て回る勘定組頭・竹内新三郎(平塚真介)と知り合う。新三郎は、旅人の老公たちを母・藤乃(角替和枝)の茶の相手に招き、ボテボテ茶を振る舞う。この辺りは土地が貧しく、少しでもお腹が膨れるようにと生まれたのが、黒豆や赤飯などを入れて飲むボテボテ茶であった。だが、領民が困窮しているのに年貢は下がらない。賢明な藩主・綱近が必ず救ってくれると信じる新三郎に、藤乃は自ら重役たちに働きかけなさいと発破を掛ける。
一方、風車の弥七(内藤剛志)は、侍の子たちから虐められていたシジミ売りの少年・孝太郎(小宮明日翔)を助ける。孝太郎は武士の子であったが、一年前に父親が切腹してからは士分を剥奪され、町人として母親の佐和(棚橋幸代)とつましく長屋で暮らしていた。その長屋に強引に立ち退きを迫る但馬屋善蔵(江藤漢斉)の手下たちがやって来るが、弥七はあっという間に蹴散らしてしまう。それに感激した長屋の住民たちは、弥七に佐和と一緒になり、ずっとここに居て欲しいと懇願するのだった。
孝太郎は、シジミを売りに行った先の屋敷で、死んだはずの父親・堀江森之丞(伊東孝明)の姿を見掛ける。あれは夢か幻か幽霊か……呆然とする孝太郎は、シジミ取りを通して仲良くなった八兵衛(林家三平)に、その出来事を打ち明ける。八兵衛は、不思議なことを言う孝太郎を心配して長屋まで送り届ける。そこで、まるで父親のように孝太郎の帰りを待っている弥七を見て驚くのだった。
百姓たちの暮らしを心配する新三郎は、城代家老の勝部靫負(かつべゆきえ/団時朗)に年貢の軽減を願い出ていた。ところが勝部は、江戸にいる藩主・綱近から、農民にさらなる重税を課した書面が届いたと言う。賢明な綱近がそんな判断をするはずがない……新三郎は書面を確かめたいと勝部に迫る。が、そこには確かに綱近直筆の証である花押が記されていた。
老公は楓(雛形あきこ)に勝部を探るよう命じる。勝部は、但馬屋の寮に奥祐筆であった森之丞を幽閉し、その巧妙な筆遣いを利用して綱近の筆跡や花押までもそっくりに真似させていた。勝部は自分に有利なお触れ書きを森之丞に書かせて、私腹を肥やしていたのだ。
夜、寝静まった長屋に、突然覆面の男たちが孝太郎と佐和に襲いかかった。弥七は二人を助け、新三郎の家にいる老公の元へと避難させる。新三郎は佐和を見て森之丞の妻であることに気付き、かつて城内で森之丞が野津市郎兵衛(山下規介)と刃傷事件を起こして切腹し、相手の市郎兵衛は町奉行に出世しているという経緯を教える。老公はそもそもの刃傷事件を怪しみ、森之丞が実は生きていて、悪事の片棒を担がされているのではないかと疑う。弥七は証拠を探すために城へ潜り込み、偽造の書状を見つける。が、勝部の手下である剣豪・山崎仙十郎(隆大介)の鋭い攻撃を受けて深手を負ってしまうのだった。
勝部は、再び偽造文書を書くよう森之丞に迫る。今度は、苛税に苦しむ百姓の反発を防ぐため藩士の俸祿を半分にするお触れを出し、さらに私腹を肥やそうというのだ。森之丞には、妻を侮辱されて刃傷に及んだのを、勝部の計らいで命を助けられた恩があった。だが、勝部が家名を残して妻子の生活を保証するという約束を反古にしていたことを知り、新たな書状を偽造することを頑として断る。
孝太郎は、怪我を負った弥七を心配し、治療に使うクチナシの実を探しに出たところを、勝部の手下にさらわれてしまう。勝部は頑固な森之丞に対し、孝太郎に刃を向けて脅す。森之丞が筆を執ったその瞬間、風車が飛来する!弥七は再び山崎と死闘を繰り広げて勝利する。一方、老公は勝部の悪事をすべて明るみにしたのだった。弥七は家族の幸せを取り戻した孝太郎に安堵し、松江を後にする。夕陽に染まる宍道湖に漕ぎ出る弥七の背中に、孝太郎はいつまでも手を振り続けるのだった……。