

美人絵師が描いた復讐(鳥取)1月17日(月)放送
鳥取へやってきた水戸老公(里見浩太朗)一行は、美しい砂丘に見とれていた。八兵衛(林家三平)は旅の手引きに挿絵を入れようと砂丘の風景を描くが全く絵心が無い。同じく絵心をそそられた老公が砂丘を襖絵にする構想を述べていると、側で聞いていた鉄山師(てつざんし)の岡田茂平(曽我廼家寛太郎)が絵の見方を教えて欲しいと請う。鳥取では鉄山師と呼ばれる人々が砂鉄を掘り、鉄を作る商いで大いに繁盛していた。鉄山師たちは儲けた金で豪勢に屋敷を飾り立て、近頃では絵がはやっているという。茂平は、今夜、絵師をもてなすので、老公にも同席して欲しいと一行を屋敷へと招いたのだった。
格之進(的場浩司)は、楓(雛形あきこ)に老公の居所を知らせに行く途中、お近(白石まるみ)とそれを庇う娘・お文(篠原愛実)が藩士たちから暴力を受けているところを助ける。お近はもとは百姓であったが、今では慣れない綿織物を作って生活しているという。だが、それだけでは生計が立たず、心臓を患っているのに医者にかかることもできない。格之進は、二人を放っておけず楓と共に世話をすることにする。
茂平の屋敷では、京都で修行をしたという美人絵師・池端桃園(国分佐智子)をもてなす宴会が開かれていた。桃園は引っ張りだこで、あちこちの鉄山師に招かれて襖絵を描いているという。絵心がないとバカにされた八兵衛は、桃園に弟子入りしようと頭を下げる。間近で見る桃園はとても美しく、八兵衛は一目惚れしてしまうのだった。
その頃、鳥取では因幡の黒兎と呼ばれる盗賊が、鉄山師の家に忍び込んでは、盗んだ金を貧しい人々に配り、評判になっていた。お近のために、せめて薬でも買えればと願うお文のもとにも、黒兎からの小判が届く。お近たちの生活の苦境は、鉄の精製のために大量の水を使うため、田んぼが干上がってしまったためであった。かつて砂鉄掘りは収穫が終わってからという決まりがあったが、10年前に鉄が専売制になってからは一年中砂鉄を掘るため、農民たちは困窮しているという。因幡の黒兎は、鉄山師たちが横取りした水の代わりにお金を取り返してくれるのだとお文は感謝する。
茂平の屋敷が黒兎に襲われた。八兵衛は、絵の練習として屋敷の見取り図を描いていたせいで犯人であると疑われ、捕らえられてしまう。八兵衛の仲間であるとして、老公一行も屋敷から追い出されてしまった。一行はお近・お文母娘のもとで世話になることになった。
老公は、桃園が出入りした鉄山師ばかりが黒兎に狙われることに気づき、桃園を問い質すがはぐらかされてしまう。鉄山師の屋敷を見張っていた弥七(内藤剛志)はついに黒兎の正体をつきとめ、農民の佐吉(高橋和也)を捕らえる。佐吉と桃園は幼なじみで、桃園はかつて鳥取一の鉄山師と言われた大山春信の娘であった。桃園が絵の修行で京に行っている間、鉄山奉行・村野勘右衛門(森次晃嗣)は鉄山師たちを懐柔して鉄の専売制を断行し、それに反対した春信は闇討ちされたという。桃園は復讐を果たすため、父を裏切って村野の側に付き、今は栄華を極めている鉄山師たちから闇討ちの証拠を得ようと、絵師として屋敷に出入りし、間取り図を描いては佐吉を手引きしていたのだった。
桃園が春信の娘だと気づいた村野は、襖絵を頼みたいという口実で桃園を屋敷におびき出す。遂に敵の牙城を探る機会を得られた桃園は、最後の仕事と覚悟して向かう。既に村野は桃園の正体を知っているに違いないと案じる佐吉。そこへ、佐吉と桃園の関係を知ったお近が、春信から預かっていたという書状を差し出したのだった。
村野の屋敷に黒兎が現れ、村野の手下の者たちが襲いかかる。が、それは黒兎に扮した弥七であった。佐吉は桃園を助け、老公一行はお文が預かっていた村野の不正の証拠となる連判状を差し出し、悪事を明らかにする。老公は桃園と佐吉に二度と盗みをせず、鉄山師と農民が共に幸せに暮らせるよう春信の遺志を継ぐことを誓わせるのだった。
