

水戸老公(里見浩太朗)一行は和歌山の城下町へ。通りを歩いていると、一行の目の前で浪人たちが駕籠に襲いかかり、刀を駕籠に刺した。その様子を見ていた老公たちは一同に息を呑んだ。すると駕籠の中から出てきたのは、老公と旧知の紀伊国屋文左衛門(江守徹)であった。老公は紀伊国屋に招かれ、料亭で再会の杯を酌み交わした。紀伊国屋に命を狙われた理由を問うが、紀伊国屋ははぐらかすばかりである。そこで、芸者遊びの勝敗でその理由を知ろうとした。老公が勝てば、紀伊国屋は命を狙われた理由を話す。紀伊国屋が勝てば老公は、掃除・洗濯・庭掃除をする。勝負の結果は紀伊国屋の圧勝だった。改めて、飲みなおそうとした時、芸者衆の一人・染香(東風万智子)が手まりを紀伊国屋の元へと転がした。紀伊国屋が手まりを取ろうとした時、染香は懐刀で紀伊国屋に襲いかかろうとするが、芸者に扮したお娟(由美かおる)の機転により何事もなかったように紀伊国屋は染香に手まりを手渡すのだった。宴席が終わり、染香が家に戻ると、海産物問屋・杵築屋(睦五朗)が姿を見せた。染香は、杵築屋の話から紀伊国屋を父の仇と思っていた。実は、駕籠に乗った紀伊国屋が襲われたのも染香によるものであった。しかしそれが失敗に終わり、染香は自らの手で仇を討とうとしていた。それを聞いた杵築屋はうまくいくことを祈ると言い残しその場を去るが、その様子を弥七が見ていた。
約束通り、老公一行は紀伊国屋の掃除を始めた。しばらくして、老公は、紀伊国屋の袢纏を着た助三郎(原田龍二)と格之進(合田雅吏)に自分が乗った駕籠を担がせ、紀伊国屋のおとりとなって事の真相を探ろうと試みる。その頃、弥七(内藤剛志)は、杵築屋をつけていた。すると、杵築屋は家老の安宅忠興(有川博)の屋敷に入って行った。ふたりの話を聞いた弥七は、染香が紀州漆器の問屋である鏑木屋の忘れ形見・雪乃であり、安宅と杵築屋が糸を引いて紀伊国屋を潰すために、染香を利用していることを老公に伝えるのだった。一方、新吉(伊澤柾樹)と八兵衛(林家三平)は母親探しをしていた。そこで染香と会い、新吉の事情を聞いた染香は、自分も母親探しに協力すると申し出るのだった。
夜になり、駕籠に乗った老公に無幻斎(大沢樹生)一党が襲いかかるも、東条隼斗(市瀬秀和)が現れ一党を蹴散らしたのだった。東条隼人は紀伊国屋が用心棒に雇ったのだった。
紀伊国屋は座敷に染香を呼び、お守り代わりの手まりを見せて欲しいと言った。それを手にした紀伊国屋は、染香が鏑木屋の一人娘・雪乃であると言い、懐から染香の父が紀伊国屋に預けた手まりを出した。すると、染香は、父を殺し手まりを取り上げたと言い、紀伊国屋に襲いかかった。すると、紀伊国屋は染香の父親は、かつて紀州藩の大事に関わり、それが悪事であると気づいた時、紀伊国屋の仕業と見せかけて口封じに殺されたという。しかも、紀伊国屋の持つ手まりは鏑木屋が裏切られたことを伝えようとしたのではないかと言う。今まで紀伊国屋が父を殺したとばかり思っていた染香は、真相を確かめるべく安宅を問いただすが、犯人は紀伊国屋であるとの一点張りだった。染香はどちらの言葉を信じればいいのかわからず途方に暮れてしまう。
老公の元に弥七からの知らせが届いた。弥七によると、無幻斎が安宅に力を貸し、紀伊国屋と染香の命を狙っているという。老公は、安宅への茶会に行くという紀伊国屋に用心するよう伝えようとするが隼斗を連れている紀伊国屋を見て、紀伊国屋はすべてを承知していることを察したのだった。その頃、新吉と染香は無幻斎にとらえられてしまう。
一方、安宅の茶会に招かれた紀伊国屋は、お茶に口をつけようとした時、その仕掛けが分かり、寸でのところでお娟と隼斗に助けられる。駆けつけた老公一行の前に無幻斎が現れ、人質となった新吉と染香を見せる。手出しの出来ない老公一行に襲いかかるも、弥七、お娟、隼人が加わり、老公だけでなく新吉たちも無事に助け出すのだった。
紀伊国屋は老公に紀州藩の不祥事について打ち明けた。それは、紀州藩が幕府から借りた金の一部を、安宅が鏑木屋に支払ったことにして懐に入れたという。しかし肝心の証拠がない。しかし鏑木屋から預かった手まりが気になるという。老公は染香から父親の話を聞き、手まりに悪事の証拠が隠されているのではないかと察し、賭けに出ようという。紀伊国屋はわざと役人に捕らえられる。城では、紀伊国屋が安宅らの前で安宅の悪事を話した。そこへ老公たちが割って入り、紀伊国屋が鏑木屋から預かった手まりを開け、証拠の念書を見せるのだった。
和歌山を後にしようとした老公一行の元へ、染香が駆け付けた。染香は紀伊国屋の助けで鏑木屋の看板を挙げられることになったこと、そして新吉の母親が大坂にいるかもしれないことを聞き、期待に胸を膨らませ大坂へ向かうのだった。
