水戸老公(里見浩太朗)一行は浜松へ。老公は浜松城の家老、大杉喜内(美木良介)が城から盗まれた将軍家拝領の茶碗を必死に探していることを知った。茶碗は数日後に迫った茶会で使われることになっており、見つからなければ、大杉は腹を切らねばならない。

浜松の城下では数日前に火事があり、牢にも火が及んで罪人たちが解き放たれていた。戻らなければ罪人たちは極刑となるのだが、まだ数人が帰っておらず、城下には不穏な空気が漂っていた。錠前破りの名人・儀十(下條アトム)も事情があって牢に戻れない一人だった。実は大杉が探している茶碗は儀十が盗み出したものだ。儀十は盗賊から足を洗おうと決心し、盗賊の頭・山猫の文治(須藤雅宏)から最後の仕事と頼まれて茶碗を盗んだのだった。その茶碗を大杉が探していることを知り、儀十は愕然とした。

大杉と儀十の出会いは五年前にさかのぼる。毒蛇に咬まれて死にかけていた儀十の命を偶然通りかかった大杉が救ったのだ。その時生まれて初めて人の情けに触れ、儀十は真人間になろうと考えていたのである。儀十は茶碗を大杉に返そうとするが、文治とその手下たち、そして茶碗を裏で売買して儲けようと企む、廻船問屋・春木屋(二瓶鮫一)と郡奉行の吾妻佑京(杜澤たいぶん)が茶碗を取り戻そうと、儀十を追い詰めた。風車の弥七(内藤剛志)が駆け付けるが間一髪間に合わず、吾妻の配下・細田又四郎(篠塚勝)は儀十に深手を負わせ、茶碗を手中に納めた。

虫の息の儀十は、大杉に詫び、茶碗紛失の黒幕が吾妻であることを伝え、息を引き取った。死の間際にやっと恩人に再会できて改心した、儀十の哀れな心に老公も胸を熱くしたのだった。真実を知った大杉は吾妻に茶碗取り返しに行ったが、吾妻はしらを切る。そこへご老公一行が現れ、吾妻の悪事を暴き、茶碗は無事に戻ったのだった。

茶会当日、藩主の青山下野守忠重(帆之丞)が満足そうに家宝の茶碗を愛でていたところへ、老公が現れる。老公は忠重に、家宝の茶碗を大切にするのもいいが、家臣や領民を大切にしてこそ真の藩主であると、命の尊さを説いたのだった。