

剣に勝つ、医は仁術(高田)11月1日(月)放送
高田を目指して歩いていた水戸老公(里見浩太朗)一行が悲鳴を聞き、駆けつけると浪人たちが娘をさらおうとしており、その横では娘の兄が傷を負って倒れていた。助三郎(東幹久)と格之進(的場浩司)が急いで助けに向かい浪人たちを蹴散らすと、奥から凄まじい殺気を放つ浪人・早川京之進(金山一彦)が現れる。一行に緊張が走るが、楓(雛形あきこ)の加勢により、浪人たちは去ったのだった。そこへ、町医者の長崎良庵(長谷川朝晴)が通りかかった。相手からの見返りを求めず、名前も名乗らずに怪我を手当てした良庵の手際の良さや金に頓着しない様子を見て、老公は感心したのだった。
連れ去られそうになっていた娘は、物産問屋の三国屋仁兵衛(三浦浩一)の娘・お美代(穂のか)であった。仁兵衛は息子と娘を助けてくれたお礼に、一行に家に泊まって欲しいと言う。その申し出を受けた老公一行は、良庵にもう一度会いたいと願うお美代を手伝い、良庵の居所を探すことになった。
浪人たちを調べていた楓によると、お美代を襲わせたのは船問屋・橘屋清五郎(草薙良一)でその後ろには勘定奉行・小谷彌十郎(柴田侊彦)がついていることがわかった。また、凄腕の浪人・京之進は取り潰しになった松平家の家臣であった。
その頃、貧しいために病気の子どもを看てもらえず途方に暮れる母親を助けた縁で弥七(内藤剛志)と良庵は知り合う。良庵は貧しい町の人々を無料で治療しており、町人からは“赤札先生”と呼ばれて慕われていたのだった。良庵は、苦しんでいる人々にいつでも薬を渡せるように、薬を長期保存できる氷室を町に作れないかと考えていた。氷室とは、冬場にできた氷を夏でも使えるように貯蔵しておく場所のことである。弥七の案内で、老公一行とお美代は良庵と再会し、良庵の念願である氷室作りに三国屋が協力することになった。
ある日、良庵が診療している貧しい町人のところへ京之進が金を取り立てに来た。その姿を見て良庵は驚く。京之進は、かつて良庵と同じ藩で夢を語り合った、親友だったのだ。良庵は京之進が変わってしまったことに動揺を隠せない。心配した良庵は密かに後を付け、京之進が小さなあばら屋に病身の母と二人きりで貧しく暮らしているのを知る。
一方、京之進は良庵が密かに病を患う母を見舞っていることを知って憤慨する。京之進は、藩が取り潰しになったことでやけになっていた。そして落ちぶれてしまった自分と医者として立派に人の役に立っている良庵の間に深い隔たりを感じていたのだった。京之進を心配する良庵は老公に相談すると、憐れむのではなく友として苦しみを分かち合うよう助言したのだった。
三国屋の力添えと町の人々の協力で氷室は完成した。その頃、勘定奉行の小谷に取り入って藩御用達を得ようと企てていた橘屋は、人々からの信頼厚い三国屋が邪魔になり、京之進に三国屋を斬るように命じた。良庵との再会で心が揺らぎ始めていた京之進は、これが最後の仕事だと自分に言い聞かせて、三国屋のもとへやって来る。ところが、刀を振り上げた京之進の前に、良庵が立ち塞がった。斬るに斬れず躊躇する京之進。良庵は、体を張って京之進を説得する。その隙を突いて、浪人仲間が良庵に襲いかかった。京之進は咄嗟に浪人を斬りつけて良庵を守るが、その代わりに浪人の凶刃に倒れ、深手を負ってしまうのだった。
老公は京之進の改心を見届けると、悪を糺すため橘屋と小谷の悪事を明るみにした。良庵はできたばかりの氷室の氷を使って献身的に看護し、京之進は一命を取り留める。意識を取り戻した京之進と良庵は、ふたたび友情を誓い合ったのだった。
