

茶壷に追われた御老公(信楽)12月13日(月)放送
水戸老公(里見浩太朗)一行は焼物の里・信楽へとやって来た。信楽では将軍へ献上するお茶を運ぶ御用茶壺が作られていた。信楽焼は代官所が一手に取り仕切っているが、代官の多羅尾光忠(竹脇無我)が病に臥せたため、窯元からの信頼厚い、手代の寺岡数馬(高杉瑞穂)がその名代を務めることになった。
一行が名高い蔦屋藤右衛門の窯元を訪ねると、八兵衛(林家三平)が店の案内をしていた。女将の美嶺(みね/うつみ宮土理)は、一行をお茶でもてなす。老公が藤右衛門について尋ねると、夫は3年前に他界し、今は娘の巴(梅宮万紗子)とさち(岡崎高子)と共に窯元を守っているという。美嶺はどうやら助三郎(東幹久)と格之進(的場浩司)を気に入り、娘たちの見合い相手に考えているようだ。美嶺の強引なすすめで、一行は蔦屋の世話になることになった。
その頃、茶問屋の濱田屋(小宮孝泰)に呼び出された数馬は、御用茶壺の横流しに協力するよう言われる。名代という立場に付け込まれ怒りに震える数馬だが、既に悪事の片棒を担いでいるのに気付かないのかと脅され、愕然とする。濱田屋は京都所司代与力の大場仙十郎(谷本一)と結託して、出来のいい茶壺をヒビ割れと偽って手元に残し、高値で売り捌いて私腹を肥やしていたのだ。ヒビ割れた茶壺を処分するよう命じていたのは、他ならぬ数馬であった。
神社の境内で怒りと悲しみに打ちひしがれる数馬を見つけ、巴が声を掛ける。巴は数馬が名代になったことを知り、無事に役目が勤まるようお参りに来ていたのだった。数馬は巴に会えたことで覚悟を決める。だが、いざ切腹しようと刀を突き立てると、巴への未練が甦り思い切ることができないのだった。
濱田屋は手に入れた御用茶壺を大坂の廻船問屋・大淀屋に横流ししていた。藤右衛門の茶壺が高値で売れることに目を付けた濱田屋は、なかなか手に入らない藤右衛門の茶壺を確実に得るため、今度は美嶺の娘と大淀屋の若旦那・秀太郎(西岡秀記)との見合いを企む。
美嶺が窯出しをしているところに、濱田屋が見合いの話を持ってやって来る。美嶺はきっぱりと断るが濱田屋は引き下がろうとしない。そこで咄嗟に「実は娘たちに婿が決まりまして……助さんと格さんです」と二人を紹介する。驚く助三郎と格之進。老公が何か仔細があるのだろうと美嶺に尋ねると、濱田屋には御用茶壺を横流ししているという悪い噂があることを打ち明けたのだった。老公は美嶺の力になろうと、「あなたが蔦屋藤右衛門さんですね」と言い当てる。美嶺は驚き、老公がただ者ではないと感じる。そこへ、江戸からお茶壺道中の茶道頭名代・宗哲が来たとの報せが入る。老公は「宗哲」という名を江戸城で聞いたことがなく、不審に思う。
「宗哲」は大場と濱田屋が仕立て上げた偽者で、秀太郎が演じていた。代官所に集まった窯元たちは、数馬が御用茶壺を横流しした罪で捕まったと聞かされ、さらには、その責任を償うため御用茶壺の献上を今までの倍納めるよう命じられる。数馬を信じる美嶺は、真相を確かめるまでは従えないと断り、そのまま牢へ入れられてしまうのだった。
弥七(内藤剛志)の調べで、すべては濱田屋と大場が、藤右衛門の茶壺を手に入れたいがために仕組んだことだとわかった。美嶺を人質に捕られ、身代に藤右衛門の茶壺を持ち出した巴は、見合いを断られて憤慨する秀太郎に襲われる。が、機転を利かせた楓(雛形あきこ)が巴にすり替わって助ける。代官所に駆けつけた老公一行は、悪事を明るみにする。一件落着と思った矢先、巴が突然、大事な茶壺から手を放し、数馬に駆け寄った。数馬は、名代としての役目を果たせなかったことを苦に、切腹しようとしていたのだ。老公は割れた茶壺を促し、「名品と言えど割れてしまえば役には立たない。そなたには、何よりも大事に思ってくれる女性がいる」と、命と愛の尊さを気づかせるのだった。
