参詣客で賑わう伊勢へとやってきた水戸老公(里見浩太朗)一行は、烏帽子狩衣姿で食材に直接手を触れることなく、箸と包丁のみで魚をさばく「式包丁」といわれる儀式に見入っていた。そこで料理に詳しい彦蔵(中条きよし)と出会う。彦蔵は京都の腕のいい料理人だったのだが板長と喧嘩して刃傷沙汰を起こし、逃げていたのだった。

伊勢では近く、料理人が腕を競う饗膳比べ(きょうぜんくらべ)が行われることになっていた。料亭の主人・海老屋(出光元)は、饗膳比べで一番を取るために金で料理人を集めていた。その上、饗膳比べを仕切る山田奉行の稲尾玄右衛門(河原崎次郎)は、海老屋に肩入れをし、私腹を肥やそうと企んでいたのだった。ご老公一行が宿とした旅籠・亀膳も料理人を引き抜かれ、店の存続さえ危うい状態にあった。

ある時、飲み屋で酔っ払いにからまれた彦蔵を弥七(内藤剛志)が助けた縁で、彦蔵は亀膳を訪ねる。そこでは、若い料理人・清次(安田暁)が饗膳比べに出すための料理を作っていたのだが、お世辞にもおいしいと言えるものではなかった。見るに見かねた彦蔵は清次の前で料理の腕を振るった。その様子を見ていた女将の早苗(宝積有香)は清次に料理を指導してくれるよう彦蔵に頼むが、彦蔵は正体がばれては困ると断ったのだった。しかし、海老屋が手抜き料理を作っていることを知り、強い憤りを感じた彦蔵は亀膳の料理指導を引き受ける。

ところが、かつて彦蔵の料理を贔屓にしていた公家の富小路実秋(金田龍之介)が料理の審査をすることが分かり、彦蔵はとまどう。富小路が自分の作った料理を口にすれば、間違いなく伊勢にいることが知られてしまうからである。しかし、清次の料理への情熱や早苗の人の良さに心を打たれた彦蔵は引き続き料理を教えるのだった。一方、彦蔵の存在に危機感を抱いた海老屋は、食材を全て買い占めた。食材がないという逆境に立たされた亀膳では、彦蔵が一世一代の勝負をかけ、自らが限られた食材で饗膳比べに挑むことを決めるのだった。

饗膳比べがはじまり、次々と料理に評価が下されていく中、亀膳の料理を食した富小路は、そのおいしさに感動し、すぐに彦蔵が作ったものであることを言い当てる。しかし、かつて起こした刃傷沙汰が公になり、彦蔵は失格になってしまう。そこへお娟(由美かおる)が、彦蔵と喧嘩して死んだはずの板長を連れて現れた。ご老公は彦蔵の事件がただの喧嘩であったという真相を告げ、饗膳比べにかかる悪事を暴いたのだった。