C.A.Lのページをご覧の皆さまはじめまして。イラストレーターのトリバタケと申します。


この度ご縁があって水戸黄門のキャラクター制作を担当させていただきました。もともと時代劇が好きで、特に水戸黄門は子どものころからよく祖父、祖母といっしょに観ておりましたので、今回のお仕事はやりがいがありましたし、とても楽しかったです。
ミーハーな僕はその上、担当の方にお会いするたびに、ある「お願い」をし続けていました。
「水戸黄門の撮影を見学させて下さい!」
と…。

そして今回念願がかない、京都の太秦撮影所にて撮影を見学させていただけることになりました!
以下はいちファンの目線で見た、撮影のレポートです。
素人の文章でお見苦しい点もあるかと思いますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。



■ 撮影所の雰囲気に緊張
10月某日、慣れない早起きで眠い目をこすりながら担当のAさんと待ちあわせ、東京駅から新幹線に乗り込みます。京都駅まで約2時間、そこからタクシーでしばらく。遂に念願の京都太秦撮影所に到着です。

タクシーから降りただけで、こころなしか空気が違うような気がします。
まずは撮影所の方に御挨拶し、スタジオに入る前に、撮影所内をひとまわり。大きなスタジオが立ち並んでいる様子は、まるでなにかの工場のようです。

外にはセットの一部であろう大きな岩や木、家の一部、なんだかわからない材木の切れっぱしのようなものが雑然と置かれ、スタジオとスタジオの間を繋ぐゲートには全て「警笛ならすな」の文字が。いわゆる「撮影の裏側に潜入」した気分がビシビシしてきました。


■ いよいよスタジオ入り
場違いなところに来てしまった自覚が出てきたところで、いよいよ撮影見学です。
スタジオ内は既に真っ暗。どうやら撮影の合間で、監督さん、役者さん、スタッフの方々が次のカットの確認をしている様子。邪魔にならないよう、後ろのほうからそ〜っとセットの中を覗くと、おお!いきなり黄門様、助さん、格さんの3ショット!
…と思ったら、小松政夫さん、DO-YOのお二人演じるニセ黄門様ご一行でした。普通に騙されてしまった。

監督さんの掛け声で撮影が再開。ところがニセ助さんの最初の一言、たった一言になかなかOKが出ません。こういうことってバラエティ番組などで半ば笑い話として話されているのを聞いたことがありますが、実際目の前で見ると、ただの見学者である僕でさえドキドキしてきます。スタジオ内の空気もピリピリしはじめて、演じている方の緊張はいかばかりかと想像するのも恐いくらいでした。



■ 本物登場
その後ニセ黄門様ご一行のシーンは無事撮影が終了し、僕とAさんは別のスタジオへ移動しました。
いよいよ(本物の)黄門様ご一行、里見さん、原田さん、合田さんの撮影です。先ほどのスタジオでは遅れて入ったこともあり、少し離れたところからの見学でしたが、今回はポジショニングもバッチリ。原田さん、合田さんは思った以上に背が高くて足も長くて、とても僕と同じ生き物とは思えません。そして里見黄門さまは例のお衣装の色のせいもあるのかもしれませんが、ライトの光を浴びているというよりはさらに強い光でそれを弾き返しているようでした。


■ 森光子さんスタジオ入り
撮影は快調に進み、次のシーンへ行く前に休憩。ここで原田さん、合田さんはひとまず出番終了の様で、取材のため外へ。
しばらくして、森光子さんがスタジオ入りされました。撮影所の方とご挨拶されているのに僕も紛れ込んで、かなり近くでそのお姿を拝見しましたが、お肌の色つやの美しさには本当にビックリ。そして撮影中、休憩中の周りの方への心配りにも感動しました。
撮影スタッフの方々も含め、この日拝見したみなさんそうでしたが、長く一線におられる方は人としても一流なのだなと、撮影の見学という趣旨からは離れますが、大きな勉強をさせていただいたと思います。そしてそういう方々が集まってこそ水戸黄門という番組の、あの厳しく優しい雰囲気が作られるのだなあと思いました。


■ おみおくり
スタジオでの撮影が一段落し、里見さん、森さんが撮影所からお帰りになるのをおみおくり。僕の見学も今日の分はひとまず終了となりました。

ホテルの部屋に帰りベッドに座るとどっと疲れがでました。特に動き回るようなこともなくただ一日突っ立って撮影を見学していただけなのに、スタジオの緊張感おそるべし、です。
明日は早朝から外での撮影ということもあり、風呂に入ってさっさとベッドに潜り込みました。


■ 撮影二日目
朝7:00、まずはホテルのロビーでAさんと待ちあわせ、タクシーで太秦撮影所に向かいます。撮影所には既に忍者の衣裳を着た役者さん、山伏の衣裳を着た役者さん、昨日と違い、大勢の役者さんがいらっしゃいます。みなさん揃ったところで、バスとハイヤーで撮影のある山に向かいました。
その途中細い道に入ったため、僕とAさんの乗ったハイヤーは切り返しをしているマイクロバスを追い抜いたのですが、バスの窓から見える人のアタマが全部忍者なのはちょっと不思議な光景でした。撮影所の近所の人たちには見慣れた光景なのでしょうか?

さてどんな珍しい景色の場所に連れていってもらえるのかと思いきや、到着したのはいたって普通の山中です。街の景色にくらべれば、山の中は江戸時代も今もあまり変わらないでしょうが、それにしても自分が子どもの頃、虫取りをしたりして遊んでいたような場所となんらかわりません。生えている木もふつうだし、すぐそこまで金網がはってあったし、ちょっと下の方を覗くと川ともいえないような溝に空き缶が捨ててあったりします。ほんとにここで撮影を?と思っているうちに役者さん、撮影スタッフの方々がてきぱきと配置につかれました。
するとその、なんでもなかった山の景色が、みるみるうちに「TVで見たことのある」場所に!
昨日のスタジオでの撮影では、セットや照明で舞台を作り、その中で役者さんがお芝居をしていましたが、今日の外での撮影は、役者さんによって普通の景色が舞台に成った、という感じです。なんだか魔法を見るようでした。



■ 雨が降ってきた
撮影が進むうち、ぱらぱらと雨があたりだしました。この日のぼくはTシャツの上に長そでのシャツ、その上にジャケットという、10月中旬としてはおよそ標準的な服装でしたが、山の中、それも京都の寒さを甘く見ていたようで、すっかり体が冷えきってしまい、気を抜くと歯がガチガチ鳴ってしまうほど!
そんな中、現場に到着されたのは飛猿役の野村将希さんでした…(ご存知の通り、飛猿の衣裳はほとんど上半身裸です)。
役者さんって大変!


■ 撮影のペースが上がる
雨足が少しずつ強くなるにつれ、撮影のペースも上がっていきます。監督さん、殺陣師の先生、指示をふる方の声もだんだんと大きくなり、現場は緊迫した雰囲気につつまれます。僕はすっかりビビッてしまって、昨日の図々しさもどこへやら、「下手な場所に立って迷惑をかけては大変!(というか単に怒られるのがこわい)」という思いで、撮影現場からジリジリと後ずさりをはじめてしまいました。
そしてそのせいで撮影場所の移動についていけず、今日一番の大人数で行われた<忍者軍団、山伏の格好をした人たち、黄門様ご一行入り乱れての殺陣>を、すごく離れたところから見る羽目になってしまいました…



■ 忍者のみなさん
さすがに心を入れ替え、撮影の取材に慣れているAさんをピッタリマーク(ちょっと考えればわかる対処法でした…)。なによりせっかく貴重な体験をさせていただいているのですから、気後れしている場合でもありません。それからはお娟、飛猿、鬼若、そして忍者軍団それぞれの迫力ある立ち回りを堪能しました。そして撮影の合間にはこんな風景も…


■ 撮影クライマックス
いよいよ雨も本降りに近くなってきました。時間もだんだんと夕方にさしかかってきます。
スタッフのみなさんが撮影を急いでいたのは、今日中に、そして雨が本降りになる前に取り終えなければいけない重要なシーンがあったからなのです。
それは爆破シーン。
先ほどの殺陣が撮影されていた場所から少しはなれたところに、木で作られた本物の家が建っていました。休憩中近くまで見に行くと、外観がきちんと作られているのはもちろん、室内の壁には笠までかかっています。ちゃんと窓から見える家の内装のことまで考えられているんだなあ、と感心して上を見上げると屋根はありませんでした。えーと……合理的!
入念な準備と数回のテストの後、いよいよ今日の撮影もクライマックスです。本当に入念な準備とテストが続き、寒さのせいで僕の体もクライマックスでした。
「3、2、1、…」
監督さんのカウントダウンがあって、役者さん、スタッフのみなさんが見守る中ついに爆破!
大きな音がして、白煙が立ち上りました。

・・・・・・・・・・

「OK!」


■ 見学を終えて
これで、僕の見学は終了となりました。
そしてこのシーンの撮影で、1000回記念放送の撮影はクランクアップだったそうです。

今回撮影を見学させていただいて思ったのは、TVドラマの制作には、役者さん以外にもこれだけ沢山の人が関わっているのかということです。僕が見たのは、長い撮影期間の中のたった2日間ですが、それでも何十人、いや100人近くかもしくはそれ以上の方々を目にしたのではないでしょうか。そしてもちろん、撮影の見学だけではお会いできない方々もたくさんいらっしゃるでしょう。アタマではわかっているつもりでしたが、実際目の当たりにするとまた新鮮な驚きでした。
こういったTVには映らない方々が、きっちりとしたルールとシステムを作り上げているからこそ、役者さんたちが安心して躍動できるのだと思います。たまにはそばで聞いていると恐いようなやり取りも耳にしましたが、そういった時も常に、お互いの仕事に対する信頼が前提にあるような気がしました。

僕の仕事は少人数、ときには一人で完結することも多い仕事ですが、なにかを創る仕事の末席に座らせていただいているものとして、今後に繋がる、本当に貴重な体験をさせていただいたと思います。
ありがとうございました。

そして水戸黄門ファンのみなさん、ひとりだけいい思いをさせてもらってどーもすいませんでした。





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